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社長Blog社長Blog2022.042022 TSUISEE上市にあたって 【中華料理と僕が人事になったワケ Vol.2-Ⅲ】
2022 TSUISEE上市にあたって 【中華料理と僕が人事になったワケ Vol.2-Ⅲ】
自分でも、予想しないことが、口から出た。
どうして言ってしまったのか。
犬を抱く、なんて。
おじさんは、急に「おうおう」と言って、子犬を抱き上げ、僕の腕の中にそっとおろした。
「この子は騒がへんから。ええ子やねん」
確かに、僕の腕の中で、その子は騒がなかったけれど、僕はじん麻疹で、背中がゾクゾクして、痒くって、足は少しばかり震えてもいた。
駐車場の脇で、「お願いだから動かないで!」と腕の中の子犬にお願いしながら、ワンカップ大関の会計をする副店長が一円玉を数えるのが遅くて、イライラしていた。
早く会計終わらせてよ!と。この犬を早くなんとかしてくれ!
会計が終わると、おじさんはワンカップを片手に、上機嫌で子犬を引き連れて帰っていった。
「なあ、おとなしくて、ええ子やろ。」
僕には、じん麻疹と、冷や汗と、子犬ってこんなに温かいんだという驚きが、残った。
■そんな理由で、人事になる
「君、犬嫌いなのに、抱っこしたの?」
話終わると、石川さんは大笑いしながら僕に言った。
「抱くんだあ。」
僕は、笑わないでください、コンビニのバイトも大変なんですよ、と言いかけようとしたけれど、石川さんは、なんだか一人で「うんうん」とうなずいて、「いやあ、いい話がきけました。バイト頑張ってるんだね」とだけ言ってくれた。
そして
4月1日、入社式。
僕は、晴れて海外営業。
ではなく、人事部に配属されてしまった。
配属を伝え聞いて、絶望し、「海外営業できないなら、辞めてやる!」と思った所で、廊下で石川さんを見かけた。
石川さんが、僕の方によってきて、言った。
前山くん、ごめん。
僕の一存で、勝手に人事にしちゃったから。
ごめんね。
でも、とりあえず、一度、人事をやってみて。
犬を抱くじゃないか、君は。
■そんなワケで、人事
タクシーの中で、僕が話し終わると、真剣な表情で中岡さんが言った。
「それって、『関わる』ってことやね」
なんか、分からんけど、きょうやんの話で、人事って関わることなんやなって思ったわ。うん、分かってないけど、なんか分かった気がする。
中岡さんは、そう言って、タクシーを降りて、ホテルへと向かっていった。
僕らがつくるアプリケーション。
それは、きっとそんな方向にあるのではないか。
上手く言葉にできないけれど、
不器用なやり取りを繰り返す人と人。
その間にあるようなシステムが創れたら、それは実に僕たちらしいのではないだろうか。
システムだからと無機質でツルツルしたものではなく、面倒な人と人の間にあるようなもの。
ホテルの鍵が見つからず、エントランスで、ポケットをまさぐって、クルクル回る中岡さんをみながら、僕はそんなことを思った。