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社長Blog社長Blog2022.042022 TSUISEE上市にあたって 【中華料理と僕が人事になったワケ Vol.2-Ⅰ】
2022 TSUISEE上市にあたって 【中華料理と僕が人事になったワケ Vol.2-Ⅰ】
■中華料理からでいいですか?
他社のサーベイデータを解析して「何か意味のある結果を発掘する」という依頼がキッカケで生まれた問題意識は、短い時間の中で次第に大きく、より現実的なものになっていった。
というのも、同様の依頼、つまり他社サーベイ結果の解析依頼が2件舞い込んだからだ。
これには、僕らはさらに驚いた。
1社などは、超がつく大企業。
毎年エンゲージメントサーベイを行っているが、毎年、経営方針が伝わっていない、という傾向が見えるとのこと。
人事としては、対策を考えねばならないが、グループ会社各社に「経営方針が伝わるように何か策を考えてください」程度しか話すことができておらず、結果的に、グループ各社で、経営を囲んでのランチ会を開く、という程度の施策しかできていないらしかった。
若い人事担当者の方が、
「うちのグループ各社で、いま、ランチ会が横行しています(笑)」
と冗談まじりで話していた。
長机が並んだ広い広い会議室に、ワイシャツネクタイの上に作業着を羽織った偉い人が座り、お弁当を食べている姿を、僕はぼんやりイメージした。
蕎麦が運ばれてくるのが待ちきれないのか、割り箸を噛み始めている中岡さんが言う。
「麻婆豆腐がいいなあ」
いやいや、蕎麦屋ですから、ここ。
「中華のお店が良かったですか?」と上野さんが優しく訊く。深夜までかかった打合せ終わりに、僕らは蕎麦屋になだれ込んでいたのだ。
「ううん、違うよ。会社名。」
え?
僕はふらふらと漂う思考を慌てて回収し、中岡さんに聞いた?
「会社名?麻婆豆腐が?」
「そう。会社名は麻婆豆腐がいいと思わない?会社創って、データサイエンスのアプリ作るなら、会社名は中華がいいなあ」
Why?
中岡は数学者で、今は北海道大学大学院の准教授で、何か難しそうなことを研究している。
高校一年のとき、南大阪のシガナイ公立高校で出会ってからの付き合いだ。
(意外とスゴイ人らしいけれど、僕にとっては、シンプルに親友なだけだ)
何を見ているのか分からないけれど、中空を見つめて、中岡が言った。
「うん。やっぱり、中華で決まりやな。きょうやん(中岡は僕のことをこう呼ぶ)の好きな中華料理は何?」
え。好きな中華料理・・・?
とくに思いつかない。エビチリ、エビマヨ、天津飯・・・、餃子、空心菜炒め、チャーハン・・・。
さして好きでもない料理が、場違いな蕎麦屋で脳裏を巡っている間、中岡は目をまん丸くして、僕の答えを待っている。何かとっておきの答えを待っている子供みたいな目をして。
「ホ、ホ、ホイコーロー」
どうして出た?ホイコーロー。
脳科学の研究がもっと進めば、このとき「ホイコーロー」という単語が、僕の口から出た理由が、いつか解明されるのだろうか。
「よーし!決まり。会社名は、ホイコーロー。いいね。収まりがいい」
中岡の中で、何かと何かが、はまっているんだろうか。何がどう収まっているのか分からないけれど、無邪気に笑う中岡を止める気など皆になく、見事社名はホイコーローとすることになった。
経営学者の宍戸が、「データサイエンスの会社だから、もっとなんかこう、恥ずかしく無い名前にしませんか・・・。名刺渡すときに、ちょっと勇気がいる・・・かも・・・。」
秀才で、キレ者の宍戸が、遠慮がちに、至極真っ当な意見を言う。
冷静で、客観的な宍戸の意見に、僕はいつも助けられる。
たしかに。
最終的に、「それっぽくなるように、英語にしようぜ!」という僕のノリで、
社名は、Maxwell’s HOIKORO(マクスウェルズ・ホイコーロー)とした。
(Maxwellは、データサイエンスに多大な貢献をした、James Clerk Maxwellから拝借した)
社名が決まっただけで、なんだか冒険が始まったような気がして、不思議な夜だった。
■僕が人事になったワケ
深夜の大阪、天満橋。ごはん屋さんを出て、タクシーを探す。
中年の男女が、4人。まだ起こってもいない未来について話しが尽きない。
クライアントとの間でもそうだけれど、僕はこういう時間が大好きだ。
何かを夢想して、自分たちに期待して、わけもなく笑う時間。僕が会社をやっているのは、きっとこういう時間を沢山経験したいからだろうと思う。
「なんできょうやんって、人事になったん?」
僕は大学を卒業して、大手電器メーカーに就職したのだが、配属が「人事業務企画部」で、いわゆる人事部の仕事をしていた。コンサルティングの世界に入る前の経験は人事部なのだ。
「人事部の人に役に立つデータサイエンスをやるんやろ?人事部って何するところなん?なんできょうやんは、人事部で働こうと思ったん?」
中岡さんが重ねて聞いてくる。
もう、随分と昔のことを振り返って、僕は答えた。
「たまたま、かな。」