内容:知見と事例

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    2020.09
    メンバーインタビュー【宍戸拓人 Vol.3】

宍戸さんインタビュー第3部です。最後はほんわかするようなHYAKUNENメンバーのお話や、気になる宍戸さんの今後の夢なんかも聞いています!

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笠松:HYAKUNENと宍戸さんの関係性についてもお伺いしていきたいのですが。 HYAKUNENのメンバーについて宍戸さんはどんな印象をもっていらっしゃるのでしょうか?

宍戸:まず中岡さん。中岡さんを凄いなと思うのって、ステレオタイプではあるんですが、やっぱり学者って専門性を出していくっていうのが基本です。中岡さんのやっているような理系のデータサイエンスって特に文系よりも細分化が進んでいるので細かい領域の中のみで深く詳しくなるイメージがあります。中岡さんってどう考えてもその細かい領域の中の人なのに、平気で他の領域をまたぐんです。データサイエンスと全然関係ない議論でも発言をするところ、もうそこに僕は驚きました。僕のステレオタイプで思っている理系の博士号取ってバリバリ研究している人のイメージとは随分違いました。話始めると難しい話になって、簡単に説明しようとすると更に難しくなる、みたいなところは僕のステレオタイプ通りだったんですけど(笑)。でもやっぱり問題に対するアプローチを考えると、自分の領域に囚われずに領域をいきなりまたぐ、それが出来るのは中岡さんさすがだなぁと思いますね。

上野さんは、僕がHYAKUNENで一番最初に関わったセミナーのお仕事でエピソードがあって。上野さんがデータの分析で悩んでいると相談を受けたので、僕は極端な話、10個変数があった場合、ペアを全部総当たりすると2個のペアは45個になる。そんな感じで総当たりで全部分析するとどっか何か出てくるんじゃないですかね、みたいにラフに答えたんです。そうすると上野さんは次の日に本当に全部のデータを総当たりして出してきたんです。それが上野さんで。あれ何個あったんだろう。100個以上あったかなぁ…。むちゃくちゃな数のデータを見ようとして印刷かけたら机に置けなくなって部屋中に広げたみたいで。もう、ぶっとんだ人だなと思いました。イメージとしては鉄壁の安定感というか、上野さん通すと全部確認することが出来たりとか、ミスがなくなったりとか、やっぱりその辺の鉄壁なところはすごいな、というのはあります。あそこまでこだわってやる人ってあまり見たことがないです。上野さんって多分「ここまでやればいいや。」というのがない人です。そこはやっぱりすごいですよね。

あとはトリで前山さんなので、笠松さんですね。笠松さんはまだそんなにお話したことないのですが、前回ちょっとデータ作成頼んだりとか、あとは経緯をお聞きする感じだとやっぱりすごいなと思いますよ。いや、サバイバル能力があってたくましいイメージ。HYAKUNENって信頼感が大事なタフな場所だと思うんですけど、そこで色々な作業をされているところを見ると、そう思います。

笠松:(照)あ、ありがとうございます。

宍戸:最後前山さんですね。どうしようかな…。

笠松:え、インタビュー前に前山さんは宍戸さんのこと大好き大好きって言ってましたよ(笑)

宍戸:前山さんってあえて難しいことやりたいっていう人だと思うんです。そして、前山さんは人に気を遣う人。この何年間かずっと思っているのは、その気遣いが時々、それも結構時々、HYAKUNENの大切にしている価値観とぶつかっちゃうことがあって。例えばこの状況だったらこの人が100%悪くなくても叱らないといけないとか、この状況だったら無理させなきゃいけないけど、でも当人の能力を超えてるのが分かっちゃってるとか。こういう時に人に気を遣っちゃうと、もう俺がやるよ、みたいになったりすると思うんです。だけど、そういう安易な判断は絶対にしない人、悩み続けるのが前山さんです。これって仕事そのものの難しさというより、その人らしさからくる原理原則のところのストイックさだと思います。悩まずに会社や個人の都合に合わす方がどれだけ楽か。最終的な判断までのそのプロセスの中で前山さんは非常にしんどい時間を過ごしていると思います。僕はあそこまで悩み続けられない。僕の強みは生産性だと思っていて、なので生産性から考えるとそういう悩みというのはある面燃費が悪いようにも見える。でもHYAKUNENとしてははずせない何かがそこにある。それがすごい。楽な判断をしてしまわないで悩み続ける人っていない。やっぱり稀有な人だと思います。

笠松:悩み続ける人、うーん理解できます。そして宍戸さんの強みは生産性と。高い生産性というのは、ある種HYAKUNENで物事を追求するときに悩みの種にもなりそうですよね…。いじわるな質問で申し訳ないのですが、逆に宍戸さんが一番苦手なことや、向き合わなければいけないと思っている課題等はあるのでしょうか。

宍戸:まさに生産性と表裏一体なのですが、ある種の諦めの早さというのがあると思います。僕の考えでは、生産性にとって重要なのは、いくつかの選択肢を思いつき、その中でベストな選択肢を迅速に選ぶ勇気を持つことだと思っています。でもそれは、他の選択肢にさっさと見切りをつけて、追い求めることを諦めるということを意味します。短期的には生産性は最大化されますが、実は諦めた選択肢の中にはもっと大きな価値を生むはずだったものが含まれているかもしれません。高い生産性を達成できたという満足感だけに目を向けたくなりますが、諦めてしまった選択肢についても、本当にそれで良かったのかと悩み続けるということが課題になっていると感じています。

笠松:前山さんに続きここにも悩める男が1人、ということですね。愉快な仲間に囲まれて、HYAKUNENは宍戸さんにとってどんな場所なのでしょうか?

宍戸:一番は学びの場ですね。人にもよるのでしょうが、僕の場合、研究室にとじこもり、教室で講義を繰り返すだけだと、研究者としても教育者としても自分の成長が止まってしまうのではないかという恐怖を感じてしまいます。経営や組織を扱う研究者や教育者として成長するためには、会社で実際に働いている人々が直面している問題に対して一緒に悩み、解決に向けて一緒に苦労するという経験が必要なのだと思います。その意味で、もうすぐ40歳になるのにもかかわらず、今もなお、成長実感を持ちながら過ごせるというのは本当に幸せなことだと思っています。

笠松:最後に、今後はどのようなことをしていきたいのか教えて下さい。

宍戸:HYAKUNENで今後具体的に何をしていくのかは全くよめないです。でも僕が今一番感じていることは、先ほども話したように,ここで成長した実感の大きさなんです。理論がちゃんと理解出来ていなかったとか、分析の手法も実務でするとこういう方法もあるんだとか。この何年間で学ぶ経験が多くなり、そして僕だけがそうであるのをもったいないと思っています。例えばその場に大学院生や他の研究者がいれば、もっと議論が盛り上がるし、勉強になるだろうし、本当にもったいないなと思うんです。なので、ゴールとして思うところは、前山さんとも話している学会なんです。学者と実務家が集まって、ケースや研究成果を発表したりする中で良い議論が出来るようになる、そんな場があればいいなと思っています。実務との関わり方も、学者が調査を担当すればいいというものではなく、もっと勉強になる関わりが増えていけば良いと思います。そして、そういう関わりや場が増えていき、そのゴールが学会ですね。少し時間は掛かるかもしれないですが、学者と実務家が対等に話し合える場が出来たらいいなと思っています。これが出来るポテンシャルはHYAKUNENにはあると思っています。前山さんと会った初期の段階ですでに話していましたね。

笠松:ポテンシャルがある…。どのような時にそのポテンシャルを感じられたのでしょうか。

宍戸:課題や価値といったものに最も高いプライオリティを置く、というか、それだけにフォーカスして仕事をしていると感じるときですかね。「目の前の課題に対して価値を生み出すために,自分たちには何ができるのか」ということだけにフォーカスすれば、様々な立場や、これまでのやり方やルールといった決まりに配慮する必要はなくなります。それが、お互いの学びや成長につながる健全な対話や議論を生む条件だと思います。
そのような空間や場が当たり前のように必要なはずだけど、会社やあらゆる組織の中で、実際にそれができる場所は非常に少ないのではと思います。だから、多くの企業や組織では、意味のない力関係や、人間関係の問題で、本当に扱うべき問題への議論を建設的に扱うことができないのではないでしょうか。HYAKUNENは、不思議とそれができる場なんです。課題や価値にプライオリティを置いて、それに向かって、ひたすら進む。スマートに、でも愚直に。HYAKUNENでの日々のそのような経験の中に、ほんとうの意味で対等な立場で研究者や実務家がかかわれる学会を開催するポテンシャルを感じています。それは、研究者としても一人の人間としても、社会にとってとても大きな意味のあることだと思っています。

笠松:私はまだHYAKUNENに入って少ししか経っていませんが、皆さんの行動や姿勢一つ一つがとても真摯で他とは違うな、何なんだろうと思っていたのですが、今仰っていたことが差をつけていたんですね。今とても腑に落ちました。そして社会にとっても大きな意味のある素敵な夢、考えるだけでワクワクします。その時は一緒に旗を振らせて下さいね。今回はインタビューにお付き合い頂きありがとうございました。

宍戸:ありがとうございました。

( 完 )

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宍戸さんをインタビューする、というお話が入った時に私は以前お会いした時の印象から(東京お土産でただのひよこではなく黒いひよこ!を買って来てくださったことから)、「粋な人って感じがするなぁ、よし、そんな感じでいこう!」と思っていました。実際インタビューを通して感じたのは、「●●な人」というような枠にははまらない、色々な悩みや揺れがあるとても興味深い人間味のある宍戸拓人さんでした。明確な分析力で物事を進める力に溢れていて、人を巻き込みながらたくさん悩み、分析・仮説検証していく姿が分かり、HYAKUNENにとって欠かせない愛されメンバーだな、と随所で感じられるインタビューとなりました。

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