内容:知見と事例

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    2020.09
    メンバーインタビュー【宍戸拓人 Vol.2】

今回は宍戸さんインタビュー第2部です。
前回は、今までの経歴やどのようにHYAKUNENに出会ったか、その不思議な縁についてをお伺いしました。ここからは更に宍戸さんの考えやそのキャラクターに迫っていきますよ!

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笠松:HYAKUNENでの働き方についてお伺いしたいのですが、一緒にやりましょう!となった後、現在どのような業務にどのように携わっていらっしゃるのでしょうか?

宍戸:業務という意味では,調査や分析まわりの割合が一番多いですね。クライアントの会社の方々と一緒になって組織の課題を議論、検討した上で,先行研究を参考にしながら質問票を設計していきます。データ回収後は、分析結果をみんなで議論することで、「組織において何が生じているのか?」「解決のためには何が求められるのか?」といった問題を検討していく感じです。そして、その結果に基づき行われた介入の内容を中心として新たな調査を設計し、実際の組織に好ましい変化が生じているのかをデータで確認していく、というサイクルをまわすことが基本になります。

笠松:学者として実務にどう入るかという悩みは、今HYAKUNENとして実務に入る中で解決されていますか?それとも前山さんの厳しい指導の下悩みはさらに増えていますか?(笑)

宍戸:前山さんと議論する中で,研究と実務の接点のあり方について気づくことが非常に多くあります。僕も、そしておそらく前山さんも、それを「指導」とは認識していないような気もしますが…。ただ、その接点に対する悩み自体は解決していないですし、今後も改善はするにして、解決することはないと思います。例えば、学術的な理論は実務で役に立つのかどうか、という非常にベーシックな問題について、昔よりも理解できているという自信はありますが、それを完全に理解したとは全く思ってはいません。

笠松:学術的な理論は実務で役に立つのかどうか…そういえばビジネス書を読んでいると、書いてあることはなんとなく分かるけれど実際はそうも言ってもなぁ…となってしまうことが多いんです。実務の現場に入る中で、理論では上手く説明出来ない現実を見ることはありませんか?

宍戸:理論は思っている以上に使える!というのが僕の正直な実感です。理論が使えないというのにはいくつかの理由があって、それのひとつに自分が理論を理解していなかっただけ、ということがあります。

例えば、エンパワーメント・リーダーシップという有名なリーダーシップのコンセプトがあります。ざっくり言うと、権限委譲を通して部下が自主的に行動するよう鼓舞するリーダーシップです。このコンセプトに関しては、この数週間、分析結果についてみんなで議論する中で、一段深く理解できるようになったという確信があります。多くの研究で、エンパワーメント・リーダーシップは部下の自主性を高める効果があることがデータによって確認されてきました。したがって,大学の講義でもそのように教えてきましたが、そんなに単純じゃないという事実が、我々の分析結果において示されました。よくよく考えると、やる気も責任感もない上司が「君に任せた!」と部下に言うのは、リーダーシップではなく事実上の放任なので、健全な意味で部下の自主性が高まることはないと思います。しかし、その一方で、上司が部下に仕事を任せること自体はエンパワーメント・リーダーシップの構成する最も重要な要素であり、自主性を高める効果があるのも事実です。理論を取り巻くこのような微妙だけれども重要な側面は、言われてみれば全くもって当たり前な話なのですが、教科書を読むだけでは分かっておらず、現場に入り、データをとり、その分析結果をみんなで検討するというプロセスを経て、自信を持って議論できるようになったんです。HYAKUNENでのこのような経験を通して,理論を理解するだけでなく前よりも使えるようになった、という感触を持てるようになりました。

本当に使えない理論もあるとは思うのですが、最近は僕自身謙虚になってきて、使えないのは僕が論理的には理解をしているけれど、それを現場で応用できる形で理解出来ていないのでは?と思うことが多いです。世の中単純じゃないので、もちろん理論が使えない現実は多いんですけど、でもその時に使おうとしている僕の方の理解に不十分なところがあるから、理論が使えないように見えている、という経験の方が最近は多いです。

笠松:はぁぁ…。私がスラスラと言葉の理解だけでビジネス書を読み進めていたから、使えないなぁなんて思ってしまっていたんですね…。

宍戸:でも僕も大学に勤めてはじめの数年の授業は理論上のことばかり教えていましたよ。でも今はあーだこーだ理論について補足しないと授業が進められなくなりました。

笠松:HYAKUNENと関わることによって大学の授業にも変化があったと。

宍戸:とても変わりましたよ。教える内容は同じですが、この理論を使えば絶対大丈夫!というものはないというのを重々承知したうえで、教科書には書いていないような、理論を使う時の注意であったり、その理論の限界であったりを重ねて説明しています。新しいトピックを入れることもありますね。

笠松:最先端の話が聴けて、学生さんはラッキーですね。

宍戸:教科書に載っていないことを話すと、試験には何が出るの?と言われたりもしていますが。でも今の時代良い成績を取るために勉強を頑張るというマインドセットが良くないと思っていて。目の前の課題をどう解決するか、みたいな方に意識を置かないといけないじゃないですか。なので、学生にもどうすれば良い成績を取れるかは気にしないでいて欲しいと伝えるようにしています。今まではこの理論とあれとこれを勉強しましょうと形になっていたものが、今は実務はそんなに簡単じゃないというあれこれを入れて説明するので、満足度は高くなったと信じています。

笠松:確かにテストの予測は難しそうですね(笑)。少し話が戻りますが、そもそもなぜコンフリクトの研究をされたのでしょうか?

宍戸:修士論文を戦略論のテーマで書き終えた時に、丁度沼上先生が組織の重さ研究というのをされていました。そして、そのプロジェクトの中で「コンフリクト」という部分は僕が中心にやります、ということになりました。

笠松:そのプロジェクト入ったは良いものの、心理学の要素も必要で大変そうなテーマというか、人に興味がないと出来ないのでは?というイメージがあります。

宍戸:それが、このご時世ステレオタイプにまみれた微妙な表現ですが、当時仲の良かった大学院の先輩が「お前のような女々しい人間には対立が研究テーマなのは一番合ってる。」ってひどいこと言ってきたんです。職場で表面上は仲いいけど実は嫌いとか、仕事上のぶつかり合いがあるから一緒にお昼ご飯食べたくない、とかそういうジャンルなので。

笠松:というか宍戸さん、女々しかったんですか⁉

宍戸:んー…。「まぁ、あれはあれでこうですよね。」という風な事を先輩によく言っていたからかもしれないです…。対立の問題に興味がある人って、やっぱりそういう問題で悩んでいたり、悩んでいる人が周りにいる、というのがあると思うんです。対立とか気にするタイプなのかという意味で先輩は言ったのかもしれないです…。誰と誰が仲いいとか悪いとか気にするなんて…、という話なんですかねぇ。

笠松:あはは、でも本当に興味深い分野ですね、コンフリクト。

宍戸:学者の難しいところって、人に興味はあるし追体験も出来るんだけど、ただはまりこみすぎると客観的に分析出来なくなるので、ある種冷めた感じで見るのも必要なんです。それを含めてコンフリクトってやっぱり扱いにくいテーマではあると思います。未だに対立を生じさせるのが良いか悪いか学者の間でも揺れてる。対立を起こさないとイノベーションも起こらないけれど、対立を起こして会社がめちゃくちゃになったらどうする?という議論が出てきます。結論が出しにくく、評価を確定できない研究領域だとは思います。そして今、HYAKUNENで会社の問題を色んな人と一緒になって見ていくときに、やっぱりコンフリクトって鍵だなと思うことは多いです。たった今していたミーティングでも出てきたくらいです。だから組織や人においてコアな部分に近いプロセスなんだなと感じています。その分難しいですけどね。

(第3部に続く)
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学者として実務に入る難しさや面白さをたくさんお話して下さった第2部になりました。次回は最後の記事となります。HYAKUNENの愉快なメンバーについても色々と聞いています。お楽しみに!

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