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    2022.06
    2022 TSUISEE上市にあたって 【人事部門の手の届く科学 Vol.4】

2022 TSUISEE上市にあたって 【人事部門の手の届く科学 Vol.4】
-それは、スイカに塩をかけるような-

■定量研究者の情熱

宍戸拓人。
一橋大学でPhDの学位をとり、武蔵野大学で准教授をしている一人の男。
頭脳明晰で、切れ者。
時折、物事を斜めに見るシニカルな一面を見せるものの、
それは頭が良すぎるからで、結局はシンプルに「いいやつ」なのである。

年齢は近いけれど、僕には、なんだか年の離れた弟のような気がしている。



うちの会社は、さまざまな専門家が働く場所だ。
多くの会社が、顧問やアドバイザーなどに学者などの専門家を抱えているけれど、
うちの会社は、そんな会社とは少し異なる。

専門家であろうがなかろうが、基本的に、皆同じ扱いを受ける。
学者であろうが、元経営者であろうが、雑用から何からこなすのは当たり前。
自分の専門性が活用できないプロジェクトにもアサインされる。


専門性を持ち合わせていない僕が、無茶ぶりをして、スゴイ人達が、てんやわんやしながら、力を合わせて解決する。そういう変な会社がHYAKUNENであり、HOIKOROなのだ。

優秀な面々が、誰一人、奢ることなく、努力を惜しまない姿に、日々頭が下がる。


宍戸が、ミーティングで言う。
「4.2です!」

上気した顔をみて、僕は思った。

「そこまで分かるのか・・・!?」


定量研究者である宍戸が取り組んでいたテーマは、
乱暴に言ってしまうと、
『研修で人は変わるか?』
というものだった。


多くの会社が人材育成の為に、社内講師や、研修会社・コンサルティング会社に依頼して、教育・研修を行っている。
僕らの会社にも、ありがたいことに多くの依頼がきて、たくさん研修・トレーニングを提供している。

ところが、教育・研修は幅広く行われているものの、その「効果」となると、
ずっと分からないままになっている企業がほとんどだ。

教育・研修の市場規模はそれなりにあるのに、いつまでも、何年たっても、その効果は不明なままなのだ。

教育というものの効果を測定するのが容易でないことが理由だが、
他にも理由があるように思う。

文字にしてしまうと怒られるのかもしれないけれど、
研修やトレーニングを提供する側の研修会社・コンサルティング会社からすると、効果が分からない方が都合が良い、ということもあるのではないだろうか。

自分たちの提供する研修・トレーニングの純粋な効果を測定して、
『効果が出ていなかった』なんてことになったら、次のビジネスにはつながらないことになる。

研修やトレーニングは、経営には非常に重要だ。
実務や経験で人が育つのに異論はないけれど、成長スピードを速めたり、モノの見方を変えたり、新しい手法や物事の本質みたいなものを、効率よく提供できる点で、
研修やトレーニングは、経営者や人事部門にとって、人と組織へ介入するうえで非常に簡便なツールだ。

僕の会社でも、僕が講師になって、研修を行うことがある。
「自分で考えて気づいて」
という言葉だけでは、なかなかイメージ通りの成長軌道にならないし、
「資料を作ったから、見て勉強してごらん?」と言っても、そこから読み取るものの量や質は、相当にバラつきがある。

結局、研修をして、みんなで対話し、意見を交わしていく場をつくる方が、効率的だったりする。

経営は、時間との闘いだ。無駄なことをしたり、無意味に待っているより、一気に早く、速くやる。そのことが重要だったりする。

残念だけれど、人は自分ではなかなか学ばない。
放っておいても、学ぼう、盗もうとするのは、事業を背負っている人くらいのものだ。
事業を背負っていると、明日を生き抜くための危機感が違う。

明日が当たり前のように来ると無意識に思っている人は、自分からは、なかなか学ばない。


その意味で、研修やトレーニングは企業にとって重要なツールであり続けているし、今後もそうであるだろうと思う。

一方で、当たり前だけれど、それも実施するレベルによる。


無駄な研修は、やっぱり無駄でしかない。


研修・トレーニングを、内製化して社内講師が登壇しようが、
費用を払って、外部講師が登壇しようが、効果が生まれない研修・トレーニングになると、それこそ、企業経営の足をひっぱることになる。


僕たちの会社は、『変化』をテーマにしている会社だ。
赤字の会社の再建や、企業の変革など、『現実を変える』ということを目指している。
事業成果としての売上や利益のときもあるし、人を変えるというゴールの時もあるけれど、何らかの変化を生み出す存在になろうと考えている。


そういうわけで、研修やトレーニングについても、
単に満足度が高いだけでなく、人が変わる研修・トレーニングは、どのようにすれば実現できるのかを研究してきている。

本当に経営にとって効果がある、研修・トレーニングの要件は何なのか?
人が変わる教育は、どのような条件下で発生するのか?


これを明らかにすることができれば、
意味のない研修・トレーニングを無くすことができる。


そこに挑む中心人物が、宍戸拓人だ。


『4.2でお願いします』


人が変わる、深い学びのある企業研修・トレーニングの鍵。
重い扉を開けるきっかけになる、大きな発見に、僕の胸は高鳴った。



■はじまりは、『熱狂』と『恐怖』

複数の企業に毎年研修をしている僕たちは、複数年にわたって、かなり詳細なデータを取得してきた。
研修実施前と研修実施後、研修参加者とその部下や周囲の人、研修に参加しなかった人のデータを含めて、複雑にデータをとり、解析を繰り返してきた。

そこで分かったことは何だったか?


研修を受講した人が、職場にもどって自身の行動を変え、職場にポジティブな変化を生むには、2つの要件が必要であることがわかった。

1つは、研修の中で参加者が『熱狂』すること。
これは参加者が、研修内容に対して、驚き、感銘を受け、興奮するような感情を持つことを指す。

もう1つは、研修の受講中、『恐怖』を感じること。
自分はダメなんではないだろうか。もしかして間違っていたのではないか。
そんな風に、自分に矢印が向き、不安と恐怖を感じることを指す。


この2つを、研修参加者が感じることができたとき、その人の学びは深く、
職場に戻ってから、行動が変わる。組織にとって、より良い方向で、だ。


面白いのが、この『熱狂』と『恐怖』には、次の要件がある。
それは、『恐怖』の前に『熱狂』があること、だ。
『恐怖』が先で、後で『熱狂』しても、人は職場に戻って、学んだことを実践すべく行動を変えたりはしない。

また、『熱狂』は程度が重要であることも分かった。これが強すぎても、ダメなのだ。
『熱狂』した人は、研修の後、行動を変えやすいのだが、過度に『熱狂』する受講者は、研修の中身を正しく理解する程度が低く、職場に戻った際に行動自体が変わっても、独りよがりな行動変容になってしまうのだ。
『熱狂』は、職場で行動を起こすには重要だけれど、適度でなければならない。その分岐点が、4.2点(5点満点中)のラインだった。




学術知見や、詳細なデータ、きめ細かな解析で、
人が変わる研修、行動変容がおきて、職場にポジティブな影響を与えるような企業教育の要件が明らかになった。




■それは、スイカに塩をかけるような

研修を実施している企業は多い。
それをサービスとして提供している会社もたくさんある。
しかしながら、効果を生む為の、実践的で科学的なレシピを、僕たちは知っているだろうか。


『熱狂』と『恐怖』という、相反するものが、等量に負荷されるとき、
人は変わり始める。
それはなんだか、スイカに塩をかけたら、いっそうスイカが甘くなるのに似ている。
『熱狂』と『恐怖』が同居し、混ざり合うとき、一層インパクトが増していくのだ。

このBlogで書くには、紙面が足りないくらい複雑な現象の説明をメンバーから聴いているとき、僕はぼんやりと思った。

こういう科学が、僕たち企業経営者や、人事部門には必要なのではないか、と。


昔、夏におばあちゃんの家に行ったときのこと。
おばあちゃんは、スイカを叩いてみて、おいしいスイカかどうかを当ててみたり、
スイカが甘くないときは、塩をかけたら、スイカが一層甘くなるよと、僕に教えてくれた。

塩を一振りして、口に運んで、僕はとても驚いたのだった。
「甘くなってるよっ。おばあちゃん!」


身近にあって、でも、間違いなく僕らの日常に驚きを与えるような知恵。

幼かった僕には、おばあちゃんは凄い人で、大人はみんな何かスゴイ事を知っている人だった。僕が困ったり、戸惑ったりするとき、ときには、おまじないみたいな言葉で、僕の一歩を確かなものにしてくれた。


今、世界はデータの時代で、AIやロボットが僕らの日常に浸透し始めている。
社会の変化は激しくて、根拠のない不安と、軽率な楽観主義の間で、社会は振り子のように揺れている。
デジタル化される激流に僕らの社会は飲み込まれるのか。
それとも、軽やかに波乗りするのだろうか。

迷信みたいなものではなく、データや科学に裏打ちされながら、
けれど、身近にある、この時代に相応しい<知見>=新しい知恵が必要なんだと僕は思う。


上手く説明できないけれど、
テクノロジーに支えられながら、夏の日のおばあちゃんが何気なく教えてくれるような、身近で、でも確かな、温もりのある知見。


きっとそれは、データやテクノロジーだけではまだ不十分で、デジタルとアナログの交差点にある。

経営者や人事部門は、きっとその交差点に立つ存在なんだろう、と思う。


■人事部門の手の届く科学

テクノロジーに支えられながら、確かな違いを生む知見。
それを、ビジネスの日常に持ち込もう。

僕たちは、それに名前をつけた。

『介入の科学』


人や組織をより良くするために、
僕らはさまざまな関わりを行っている。

研修・教育を行ったり、向かい合って話したり、大切なことを伝えようと経営者が演説することだってある。

未来に向けて、人や組織に働きかける行為=<介入>を、数えきれないほどするけれど、僕らは、それらが効果的に行えているか、いつまでも分からないままだ。


上手くいっていない組織があれば、人事部がマネジャーと面談。
新入社員には、とりあえず新入社員研修。
コミュニケーションは多い方がいいので、1on1を実施。
方針は共有した方がいいので、全体会議。
時代だから、リモートワーク。


経営や人事部門は、会社を良くしたいと思っているのに、
何をどうすれば効果があるのか分からないまま、
世の中の風潮や、上っ面の情報に流され、感覚的に施策を繰り返す。


どう教育すればいいのか?その教育に効果はあるのか?
上司と部下の面談は意味があるのか?
どう面談を変えれば、部下にとって好ましいのか?
リモートワークで、生産性の上がるマネジメントはどんなマネジメントなのか?


自分の会社にとってのオンリーな答えを、導き出しているだろうか?


DXという流れとプロモーションの中で、上辺のデータによる可視化に飛びつく企業も多い。
そのようなシステムベンターも多いし、流行を生み出して、ビジネスを行うのは
人材ビジネス・コンサルティング領域の、十八番だ。


とてもとても難しいけれど、
無骨に、愚直に、その先を目指したい。

人と組織にいかに関われば、本当の変化が生まれるのか。
その次の一歩が分かる、日常を変えるPracticalな科学を、経営や人事部門に手渡そう。
そして、一緒に未来を創っていこう。




人と組織の表面的な可視化ではなく、
何をどう変えれば、本当の変化が起きるのか。
それを明らかにするアプリケーションTSUISEE(ツイシー)。

TSUISEEは、僕らの日常にある、さまざまな現場への介入行為の効果を測定し、
現実を変える次の一歩を、僕らに教えてくれるアプリケーションです。




それができるのは、上っ面の可視化ではなく、人と組織のメカニズム(=構造)を明らかにする解析があるから。
分野横断の学術知見と、深いデータサイエンス技術、企業変革での実践知を融合することで、その壁を越えていくことができる。

『簡単に分かる』と、『本当が分かる』、は違う。
『本当が分かる』ことは、簡単に起こらない。

『簡単に分かること』が簡単に分かる、ではなく、
『本当が、本当に分かる』

そんな『本当』を教えてくれるアプリケーションが、TSUISEEです。


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