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    2020.09
    【第2回】医療職のやる気を引き出しホスピタリティにつなげる ~病院組織課題への新たなアプローチ~

【第2回】医療職のやる気を引き出しホスピタリティにつなげる ~病院組織課題への新たなアプローチ~

第1回に引き続き、代表的な解析結果の3つ目について解説します。
図3は、患者に対する質の高いサービスを重視する方針を、病院全体として持つ場合(サービス方針:高)と持たない場合(サービス方針:低)において、患者志向の行動を多く取る医療職と取らない医療職で、病院組織に対するコミットメントに与える影響の違いを示しています。

事前の予測では、病院全体のサービス方針の程度にかかわらず、実際に患者志向の行動を多く取っているということは、その医療職の病院組織に対する愛着や帰属意識が高いと考えるのではないでしょうか。
ところが、同じ患者志向の行動を多く取る医療職の間でも、所属する病院の患者サービスを重視する程度が高い場合と低い場合では、病院組織に対するコミットメントに大きな差が見られます。

患者サービス方針の程度が低い病院では、患者志向の行動を多く取る医療職よりも、むしろ取らない医療職のほうが、コミットメントがわずかに高いという結果になりました。特に患者サービス方針が徹底されていない病院においては、医療職個人として高い志を持ち、患者志向的行動を取ってくれる医療職は有難い存在です。

しかし、病院全体の方針と医療職個人の行動との間のギャップを放置するのは危険です。なぜか最近あの人の元気がない、あの優秀なスタッフはなぜ辞めてしまったのかという事態を生む前に、必要な対策を取る必要があるでしょう。

【病院の組織パフォーマンス向上に向けたアプローチのフレーム】
いくつかの代表的な解析結果を解説しましたが、例えば、図1、図2の解析結果からは、退職意思を低下させたり、エンゲージメントを向上させるために、病院として何らかの施策に取り組んだ場合、評価制度の満足度が高いという条件が満たされないと、組織パフォーマンスの向上につながらないことが明らかになりました。

そのほかにも、今回実施したさまざまな解析結果により、一定の条件を満たしているかどうかによって、施策の効果の大きさが異なり、場合によっては悪い効果を持ち得ることが分かりました。

図4は、それらの条件・分岐点を、病院の組織パフォーマンスの向上に向けたアプローチとして、フレームに落とし込んだものです。今回調査した分野は、大きく「価値観」→「仕組み」→「組織プロセス」→「組織パフォーマンス」の4つの領域に分けられ、矢印の向きは、次に取る施策が組織パフォーマンスの向上につながるかどうかの条件・分岐点を示しています。

さらに、4つの領域の中で分野を分けて矢印を描いていますが、これは各領域内での条件・分岐点を示しています。
例えば、患者を重視する価値観が浸透している状態で、適切な評価制度を整備し、さらに上司のリーダーシップを改善すると組織パフォーマンスが最大化されます。
一方で、条件を満たさない状態で、矢印の次の領域・分野を改善する施策を取った場合、組織パフォーマンスへの効果が小さくなるばかりか、図1の解析結果のように逆効果となることもあるのです。
なお、分岐点という表現は、ある領域・分野の施策を取ろうとしたときに、矢印の手前の領域・分野の状態が、その施策の成功を左右する分岐点となるという意味で用いています。

改めて、代表的な解析結果を図4に示したアプローチのフレームに照らし合わせてみると、事前の予測に反する結果であっても、思いもよらない結果ではないことに気づきます。
定量データの解析とは、単に組織や医療職の現状を定量指標化するものではありません。解析結果をもとに、その背後にある病院組織に特有の因果論理を読み解くことで、自分たちが持っている思い込み・思いつきの直観を、磨かれた直観・洞察に昇華することができるのです。

現在、人事施策に取り組んでいる、または新たに人事施策を検討しようと考えている病院には、各病院・医療職の実態をアプローチのフレームに照らし合わせながら、現場の想いを想像してもらうと、より効果のある施策に近づけるのではないかと思います。
そして、各病院で施策を実行した後に、その効果を定量的に検証することも重要です。検証結果をもとに仮説を立て、次なる施策を実行し、検証する。このような仮説検証型のサイクルを回すことができれば、従来とは違う新しい形で医療の現場をサポートし、病院組織の変革を後押しできるのではないでしょうか。

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